禿と髭

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禿と髭

のっけからどうしようもない告白で申し訳ないが、私はハゲとヒゲが好きである。男なら勇ましくハゲかヒゲであってほしい。公共の場でどうどうと熱弁を振るう勇気がないので、猫の額ほどのこのスペースで囁かせていただきました。どうもすみません。

ハゲ。ヒゲ。

このようにカタカナで書くと、若干バカにしている感があってアレですけれども。

漢字で書くと禿と髭。

なんかカッコイイ。風格があって堂々としている。こんなこと言うと男女差別がどーのこーのと言われそうでちょっと怖いが(小心者の杞憂)、いかにも男性的な漢字ではありませんか。禿と髭。薄くなっておしまいになった頭を抱えて、ため息をついていらっしゃる世の殿方達には、自分を「ハゲ」と思うな、「禿」と思え、と説きたい。説き伏せたい。隠すなんてもったいない。もっと私たちに惜しみなく見せて。そして触らせて。そこまで薄くなってるなら、もう、思い切ってすべてをさらけ出して。女子高生の、パンツとの境界線スレスレスカート丈に悶絶する男性諸君よろしく、私たち禿好きは、彼らの禿様式に悶える。いいじゃんか、もはや減るもんじゃナシ。ハッキリ言って、貧乳フェチが存在するように、女のなかにもハゲフェチはいる(ヒゲフェチも然り)。
少し前、友人たちとその話で大盛り上がりしたことがある。

「とにかくハゲにソソられる」
「なかには薄くなった部分を必死で隠そうと、涙ぐましいヘアスタイルを取り入れている人もいるが、あれはアカン」
「やはり堂々とハゲあがっているのが最高だ」
「カツラとか植毛なんてしょーもないことしないで、もっとハゲに市民権を与えるべきだ!」
「そうだそうだ、私たちの禿をこれ以上奪わないでくれ!」

皆さんに届け、このフェチの思い、である。

考えてみれば、私たちは金さえ出せば、整形で顔を変えたり、植毛で毛髪を増やしたりできる時代に生きているわけだ。真剣に悩む人達が、一生懸命金を貯めて、自分好みの「自分」を手に入れる。悪いことではないだろう。
しかし、考えてみて欲しい。あなたのその小さな目や低い鼻を、なによりも愛しいと思っている人がいるかも知れないと言うことを。あなたのその禿頭にほお擦りしたいと思っている女がいるかもしれないということを。

私は、友人たちと熱く語り合ったその夜、これ以上世の中からハゲ人口を減らしてはならないと思った。植毛やカツラの技術の発展目覚しいこの国。このままでは、どんどん私たちの愛する禿頭が消えていってしまう。これでは人生、潤いもなにもありゃしない。禿のいない世界なんて、クリープの無いコーヒーのようなもの。NO HAGE NO LIFE。私たちから禿を奪わないでください。

そこで私たちは考えた。

「月刊・HAGE〜禿〜」

という雑誌を作ろうではないかと。俄然、色めき立つ禿フェチ供。
「いいね。ファッション誌でよくあるように、禿ストリートスナップを特集しようよ」
「渋谷、原宿、下北沢、自由が丘、それから全国の主要ストリートで、おしゃれでカッコいい禿をスナップ」
「いいね。ジュノンボーイみたいに、HAGEBOYとして芸能界デビューも夢じゃない」
「カリスマ禿メンの登場だ」
「隔月雑誌でHIGE〜髭〜も作ろうよ」
「じゃあ、とじ込み付録には Momiage企画 も!」
「ハゲメンの一週間を禿的観点から追ってみる、とかね」
「時々、おイロケ需要にお答えして、ハゲのグラビアアイドルを巻頭に持ってこよう」
「袋とじ企画、裏禿流出写真。あの芸能人は実は禿げていた!」
「パンチラ激写、みたいなかんじでね。禿チラ激写、とかね」
「なんかどんどんBUBUCA!みたいになってきたぞ」
「じゃあいっそのこと、雑誌の名前は『HAGECA?』にするか」
「誰に問いただしてんだよ。ハゲか?て。そこは自信もてよ、確認すんなよ」

かくして妄想の翼は広がり、かなり内容の濃い雑誌企画が生まれた。根拠は全くもってないが、現実化は夢ではないと思われた(真夜中なのでみんなかなりイケイケ)。しかし。

「・・・やばいよね。日替わりでいろんなハゲに出会ってしまったら、もう現実の男では満足しきれなくなっちゃうね…」
「たしかに。こんなに禿を愛する私たちだもの。仕事に私情を挟まない、なんてクールなことは言ってられなくなるね…」
「やばい。ハゲメンに口説かれたら、家庭を捨ててハゲ道に溺れてしまう自信がある」
「恋心を理性でぐっとこらえても、隣でいびきをかくのはフサフサの普通の男。昼間あんなにハゲにまみれてめくるめく幸せを感じていたのに」
「ダメだ。たたき起こして『なんでアンタはハゲてないのよ!!』とか、口走ってしまうかもしれない」
「家庭崩壊だ」
「現実と理想の間に一線をおくのが難しくなってしまう」
「間違いなく私たちは、禿を選んでしまうだろうね」

真夜中のテンションとは恐ろしいものですね。私たちは本気で涙ぐみました。
「やっぱり、心から好きなことは仕事にしてはいけない」
それが私たちの出した結論でした。

夢は夢のまま。

甘く淡い輪郭を描き、ときおりふと心のなかで、夢想するに留めるのが最良の幸せなのである。

そんなわけで、いまだステキ計画、「月刊HAGE〜禿〜」は私たち夢見る禿ファンの心のなかに、そっと息を潜めている。いつか、家庭も捨て、禿の魅力にただただ溺れる覚悟ができたら、アナタの住まいのお近くの書店の片隅に、夢の雑誌が並んでいるかもしれない。それまで、世の中から禿頭の男性が消えてしまわないことを願います。

 

[ ハタジュン ] E-Mail: juncotys@gmail.com